大阪北部地震について

大都市大阪北部を襲った直下地震

2018年(平成30年)6月18日7時58分頃、関西の大阪府北部を震源として地震が発生しました。地震模はMj 6.1で、震源の深さは13 km(ともに暫定値)。最大震度6弱を大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市の5市区で観測したと言われています。
詳しくは気象庁、防災研究所などのサイトをご覧いただくとして、この特徴と災害・防災ボランティアの視点からレポートしたいと思います。

この地震の名称はまだ確定していないようで「大阪北部を震源とする地震」と呼ばれているようですが、以前、東大の平田先生がおっしゃっていたように「地震」が自然現象であるにに対して「震災」と命名するかは社会現象であるということから、想定された被害が大規模な震災という評価でなく、今のところ「大阪北部地震」という意味でもあるのでしょうか?
ここでは私たちもひとまずそれに従ってそう呼ぶことにします。
私たちの想定してきた大都市での直下型地震での「震度6弱」というイメージよりは確かに予想よりは被害は少なかったイメージで、もちろん、これを不幸中の幸いとは言えず、お亡くなりになった方、ケガや家屋を失った方にはお見舞い申し上げますとともに、全力で支援していかなければならないことは間違いありません。
  同時に、今後の災害対応に必要な、どんな被害や事象があったかを分析しつつ、被害が少なかったとしても課題を見つける重要性を再認識したいと思います。

大阪北部地震は、専門家に言わせると、マグニチュードにすると6.1(気象庁発表、6月18日17時現在)。たとえば熊本地震(2016年、M7.3)や兵庫県南部地震(1995年、M7.3)にくらべると、地震の規模としては60分の1ほどで、それほど大きい地震ではありませんでした。
東日本大震災のような大規模なエネルギーに比較するとまだまだ被害を大きくする大地震ではないと言えるのかもしれません。死者4名、負傷者400人強、被災家屋2万棟ほどの被害と言われています。

 そして、これは以前から指摘されている危険度の高い問題に対する無策であったことから受けたものであるということが言えないでしょうか?
まず第一に被災家屋の多くはベッドタウンの古い木造家屋が密集する地域で、大都会の防災対策の遅れは、大阪に限らず東京でもまだまだ改善されていないのが実情でしょう。
さらに、「大阪は地震が少ない」というイメージがあって、そうした耐震基準での指導や再検討が遅れていたり、高齢・障碍者など、いわゆる災害弱者への対策も遅れ気味だったということが指摘されています。
歴史を見れば大河ドラマにも度々登場する大地震が大阪を襲ったことはわかるはずですし、この7年間でも多くの自主防災関連から地域の見直しがもっとスピーディに行われてしかるべきだったと思われます。大都市における防災対策の課題をもっと掘り下げる必要性を感じました。

ブロック塀の問題点

第二に、今回の死者が以前から危険視されてきたブロック塀と家具の転倒によるもので、大規模な建物や家屋倒壊が少なかっただけに、身近な防災「地域づくり」に大きく問題を投げかけているように思えます。
まずはどこの地域へ行ってもブロック塀の危険性は指摘され、地域防災アドバイザーなどの講演の都度でも指摘されてきましたが、全国的に一向に改善された気配が少ないことです。
特に今回のように学校などのプールの土台に、防犯上不審者が入り込めない、あるいは水着の生徒への配慮から「目隠し」優先でブロック塀を設置してきたと言えないでしょうか。景観条例、生垣条例などで努力している市町村もありながら、まだまだ現場の意識改革が遅れているとしか言いようがありません。
今回のブロック塀の下敷きになり、犠牲になった少女は、まさに地域の防災意識や訓練につながる、備えの核心に迫る象徴であるような気がします。それは今日からでも自分の町会や地域で実現できる防災対策そのものです。
今回、同じように「要援護者」情報が民生委員にも渡されていない自治体や具体的な訪問や調査すら行われていない地域も指摘されましたが、これも「わかっちいるけど」やっていないという「平和ボケ」ともいえる現状です。
いつ来てもおかしくない災害国にあって、この危機感の希薄さは何が原因なのでしょうか。多くの地域で「自主防災組織」が作られ、防災講演会や勉強会も開かれていますが、現実には何も変わらない、動いていない地域が多いと考えざるをえません。まずは地域社会の中での問題提起の重要性を改めて訴えたいと思います。
お偉いさんや遠方からのアドバイザーの講演会に動員されて、やれ「いいお話でした」で帰宅していては、ブロック塀の撤去同様、危機管理能力のなさを露呈している笑い話になっています。まずは各地域の形式的な自主防災でなく、地域を変えていく取り組みの必要性を共有したいと思います。

広域対応とインフラの課題

今回の地震では、私たちのような「広域対応災害ボランティア」の出番はそう多くはありませんでした。全国の救助犬団体も待機で、事実上、捜索が必要な現場もなく、救助や救援、医療関係も動く間もなく国や行政の対応が十分だったといえるのではないでしょうか。

また、復旧支援においても大きな被災地や避難所というよりは、近隣の住民同士や行政、社協主導での細かな対応が求められる、目に見えない、外からは問題なく見える個別の家庭内災害復旧といった現象が特徴的だったような気がします。
それゆえ、余計に上記で指摘されるような「地域」での情報や対応の課題がより鮮明に見えても来ました。多くの外部からのボランティアは、行政や社協の情報、指示のなさからほとんどのマッチングも行われず、待機の状況で帰還せざるを得ませんでしたし、組織立って支援する状況より、近隣の内部ボランティア、自主防災組織の活動や個人参加にポイントがありました。まだまだ行政や社協に課題があり、協働型訓練の重要性があると思えます。

むしろ、今回の大規模対応は、大都市ゆえの巨大交通網、ガス水道、電気といったインフラ系の課題が浮き彫りになりました。高度経済成長時代に作られた生活インフラのリニューアル時期に入っているガス管、水道管など「都市地下」の見直しや、その支援ネットワーク強化など事業者を交えた対策が求められます。
また、IT系の弱点は、物理的な脱線や建物破損などの原因というより、電車を中心とする交通インフラによる大都市ゆえの混乱が挙げられますが、かえってITの再強化による、これも震度6以上は中心部への流入を防ぎ自宅待機を優先するといった、ルール化、働き方改革で、各地域や個人の行動を災害対応にしていく意識改革にカギがあるように感じました。

結論的に、日本版FEMA(危機管理庁)構想がなくなってから、ますます情報面での一元化や検証の組織化など、国や地域間連携の必要性を教えている気がします。同時に、広域的な大都市問題は、一方で小さな単位での地域や個人の対応を変えていくことにカギがあることを改めて教えてくれている「教訓」に満ちている地震だったと言えないでしょうか。まだまだ、多くの研究や議論が必要な課題にあふれている気がします。この教訓をどう生かしていくか、それを考えていくことも災害ボランティアに与えられている課題なのだと思います。(Y)

PS。都合でこのサイトを少しお休みにしていました。その間、せっかくいいご意見(コメント)を頂きながら承認するのを忘れていましたことをお詫びします。
今度、「協働型訓練」を一般社団法人化するという話が出ています。私の方は体調もあって引退するところで、このサイトも継続して引き継いでくれるボランティアを探しています。ご希望な方がいらっしゃいましたら、エントリーいただければと思います。

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