NPO防災まつり報告②

ics32日目の15日(日)は第2会場の渋谷区勤労福祉会館で午前9時半から、昨日の野外での「ICS入門講座」に引き続き、山上さんを講師に、米国FEMAが提供する災害マネジメントの全体像の中に、ICSがどう位置付けられているか。そして、その応用ツールとして米国の自主防災組織であるCERTの紹介から災害ボランティアでの標準化やマネジメントがいかに重要かの話をしていただきました。今回は屋内で環境もよく、質問も飛び出して、同時に日本でなぜ採用されないかの課題も共有できたかと思います。
継続的にこうしたセミナーを本格的に行い、ますます災害NPOやボランティアが率先してICS普及に努力しなければならないことを実感しました。

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CERTの紹介が終わると、明星大の天野先生のスマホやタブレット活用の「避難経路アプリ」と街中にあるチェックポイントを「ネオポスター」という新しい技術を駆使して、通勤通学者コースと買い物客、観光客コース、住民コースの3ルートで代々木公園の本会場を目指すという、一種のゲーム感覚での「帰宅困難のICTによる誘導」の実証実験が始まりました。

neo3まず会場でスマホにネオポスターのアプリをインストールした参加者は、勤労福祉会館の出口のポイントからルートに従って各チェックポイントに誘導されながら、道路を右に左にと目的地に向かいます。
チェックポイントでスマホなどで写真を写すと会場へのルート案内が表示される仕組みです。行政と組めば定型化したアナログの看板や外国人には多言語で表示できるように工夫するなどその有効性は、来る東京オリンピックの際の会場への案内としても応用できるのかも知れません。ゲーム感覚での訓練としては子どもや若者には大いに参加者を増やすこともできるのではないかと期待できそうです。

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ゲーム感覚での訓練中に天気は晴れ出し、会場に着く頃にはきれいな青空で昨日とは打って変わっていい天気になり始めました。到着した参加者には昨日に引き続き、埼玉県キャンプ協会のメンバーの炊き出し訓練での、気仙沼のサンマとけんちん汁、東北の新米の定食がふるまわれました。

npo5午後は、昨日に続き、宮城教育大の村上先生が、震災遺構の保存活動に関する現地情報などを話していただき、精神的なダメージが実は5年目から大きく出てくる例などを紹介してくれましたが、ICSでは直前での傾聴ボランティアに役立つシステムと、米軍などでベトナム戦争などの長期プログラムの精神療法なども組み込まれていて5年、10年単位でのフォローもコースがあることを考えると、こうした現場の声を聞けば聞くほど、ICSマネジメントの先進国はさすがだと思えました。

hug午後の次は、社協などでインストラクターを務める上村さんを講師に、避難所・運営・ゲーム(HUG)が行われ、現地で実際に担当したボランティアを交えて若い学生さんたちと大いに盛り上がりました。

今回はICS入門講座やCERTの紹介が行われる一方、行政などが盛んに導入しているDIGやHUGといった町会や地域での防災教育の手法もいくつも紹介されていました。また、マッピングやアプリでの避難ゲーム、同じくスマホでの支援物資の登録法など、ICT活用による新しい技術への試行が行われました。

dog2メイン会場では、救助犬団体の訓練の様子がデモンストレーションとして、いくつかのトレーニングが実演され、会場から選ばれた大人や子供たちが箱に隠れて、それを救助犬が探し出す訓練が拍手喝采で紹介されていました。

seifuku2また、2回目になるShakeOut訓練は、メイン会場での私の担当でしたが、急に隣で開催されていた「秋田・茨城発酵食フェア」でのご当地アイドル水戸納豆娘の登場と、おっかけの若者がステージ前に陣取った最近話題のアイドル「制服向上委員会」が歌う前座という感じでアイドルに挟まれた時間帯のせいで、登録はしていない若者が多数、協力して参加してくれました。おかげでShakeOut訓練のモブ形式(突然街中でやるスタイルのパフォーマンス)のような面白い訓練が偶然ですが、登録人数以上でできたような気がしました。

butu1そんなメイン会場でのアイドルグループ登場で参加者が少なくなったかと申し訳なく思いながら、防災まつり会場では、明星大の天野先生が開発した災害時の緊急支援物資のスマホでの登録システムが実証実験されていました。参加者は支援物資リストから個数や登録のコードなどを入力、その場で集計できる体験をしていました。この操作性や仕組みのメリットなどの感想も一度検証したいと思います。行政が物流業者との連携を模索していますが、同じように市民からの支援物資の出し方や登録、配布の方法もまだまだ改善の余地があります。担当を決めてトータルな問題提起を進められればと思いますが、今後の課題とさせていただきましょう。

npo7日が落ち始めた午後4時、何とか天候不順の中で2日間のイベントは成功裏に終わり、各NPOはICSも知らないでも、いつもの内発的なボランティア精神で誰にも指示されないまま、夕方にはゴミ一つ残さずきれいに撤収。暗い中、機材を埼玉や千葉など各地に搬送され、各部隊ごとに「ご苦労様」「お疲れ様」の挨拶での自由解散となりました。
これだけの規模のNPOやボランティア団体がこうしたイベントを助成金もなしに成功させるパワーにはいつもながら頭が下がります。

こうした3,000に及ぶNPOネットワークがあっての震災支援ができたのだとつくづく思い、それでもこの5年に近い仲間の高齢化の後姿を見ながら、やはり国を挙げての日本版FEMA設立やICS、CERTの普及させる必要性を提言したいと思いました。
既にネットワークは半減しているのではないでしょうか。この市民活動の少子高齢化問題を含めて、若者や行政との連携、各地域での組織化やレベルアップが不可欠です。あのときできたから、乗り越えたからと安心せず、「喉元過ぎれば熱さ忘れず」にしない教訓を生かしたいと願っています。「常に備えよ!」はこれからも忘れてはならない災害対応の最大原則でしょう。それがあっての「協働型訓練」は成功するのだと思います。皆様、本当にお疲れ様でした。(山中)

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